児童養護施設新成人の激励にと金昭夫さんが1000万円寄付

2022年4月

医療従事者へ1000万円寄付

[ 長男の金誠一郎さん(右から2人目)と孫の昭典さんも同席し、野館一郎園長(左)、
荒船旦子理事長に基金を伝達する金昭夫さん(中央)]

地域社会が支えていることを伝えたい

 カラオケ「747」の経営者で篤志家としても知られる民団中央本部の生活相談センター所長の金昭夫さんが6日、児童養護施設で暮らしていた子どもたちが社会に巣立っていくための支援のため、「新成人お祝い金」にと東京都内新宿区の養護施設に1000万円を寄付した。

 金昭夫さんは昨年8月、本紙のインタビューに「私がすべきことは母国と故郷、そして生まれ育った日本の地域社会に恩返しをすることだ。それは今の私を幼いときから支えてくれた多くの隣人たちにつねに感謝の気持ちを持っていたからだ」と地域社会への恩返しを述べており、今回、その公言を全うしたものだ。

 この間、新宿区日韓親善協会の副会長で親交の深い、下村治生・新宿区議会議員や専門家と相談しながら、「財団」を設立する方法を模索していたが、時間を要するため、当面は「金嶋昭夫基金」として寄託することにした。
金昭夫さんが今回、愛の手を差し伸べたのは、社会福祉法人・青少年福祉センター(荒船旦子理事長)が営む、新宿区中落合にある児童養護施設「あけの星学園」だ。日本で唯一、中学生と高校生対象の児童養護施設で、高校卒業後、上級学校への進学や就職、社会訓練等、利用者一人ひとりにあった自立支援を行っている。

 また、義務教育終了後、何らかの理由で家庭にいられなくなった、または児童養護施設等を退所したことで、働かざるを得なくなった、15歳〜20歳までの青少年たちが暮らす日本で初めての「自立援助ホーム」も営んでいる。

 同センター運営の5施設で毎年50人ほどが新成人を迎えており、金昭夫さんからの寄付金は、その新成人たちが社会に巣立っていくとき、新たな門出を祝う一人5万円程度の激励金として活用する。一時のものでなく、継続して新成人たちに給付してほしいと1000万円を贈った。

 この日、金昭夫さんは長男の金誠一郎さんと孫の金昭典さんを引き連れて同学園を訪問。荒船理事長に目録を手渡しながら、息子と孫の世代になっても、この学園に継続して支援していくことを示した。

 支援を決心したのは、今も脳裏に焼き付いている幼少期の辛い思い出があるからだ。貧困だった上に、父は仕事をせずに毎日酒を浴びて、時には母を殴るなど、今で言う「DV家庭」だった。そんな夫に耐えられず、金さんが小学校3年の時、母は子どもたちと無理心中しようとしたが、兄弟で言い聞かせ、母は思いとどまった。

 「もし、その時死んでいたなら、また、母が死んでいたら私も養護施設に入っていたかも知れない。不運にも養護施設で暮らすことになった子どもたちには、支えてくれる人がいることを知って、社会人としてしっかり生きてほしい」と語る。

 同センターの荒船理事長は「このような趣旨での寄付は初めて事で、大変ありがたいこと。うちの施設の子たちの多くは親からの児童虐待だが、しっかり支えてくれる人たちがいると勇気づけられるし、とても心強い」としながら、「在日韓国人の方も、同じ日本の地域住民としてこのような厚意を持って頂き感謝している」と述べていた。

 同センターでは5月のゴールデーンウイーク後に今年の新成人たちを招いて、一人ひとりに「お祝い金」を伝達し、来年からは1月の成人の日に合わせて伝達式を行う計画だ。

 金昭夫さんは「このような施設で頑張って生きている子どもたち。ひとりでも多くの”卒業生”たちを激励したい」と、他の施設にも基金を提供していく考えだ。